2013年3月15日[金] 東京都(参議院議員会館)
マクロ経済政策は日本を救えるか? ~経済学の基礎から考える
連続講座第1回として宇都宮浄人さんを講師にお迎えしました。
宇都宮さんは、関西大学の前は日本銀行で統計関係の仕事を長く担当されており、日本や世界の経済を数字で客観的・長期的にウォッチして来られた経歴があります。
また別のライフワークとして公共交通の研究でも著名な方で、公共交通を狭義の採算性だけでなく社会的な便益を加えて評価することを提唱され多くの著書があります。
宇都宮さんに講師をお願いした経緯は、市民会議では公共投資に依存した経済政策は逆に経済危機を加速し、日本にとって有害ではないかという懸念を持っているためです。
例えば「公共事業の乗数効果は妥当性があるのか」「累積債務を上回る民間資産があるから大丈夫というのはどのような理屈なのか」「破綻があるとすれば具体的にどのような状態なのか」等ですが、それを体系的に理解しておきたいという趣旨から企画しました。
「1.マクロ経済の大枠」は、最終的に「GDP」として評価されるマクロ経済の諸指標、すなわち生産・所得・支出を構成する要素 (物価・賃金・為替レート・金融・需要)の相互関係についての内容です。
市民会議で特に関心の高い公共投資(政府固定資本形成)は「需要」の項目です。
「2.デフレーション」は、一般に「デフレ」と呼ばれる現象とその構造について、経済的な指標を使って説明する内容です。
「3.マクロ経済政策」として「3-1.金融政策」と「3-2.財政政策」から成ることを説明し、いわゆる「アベノミクス」で行われている一連の金融緩和政策、中央(日本)銀行による市場への資金供給の意味や問題点、マクロ経済対策としての公共投資の持つ意味などの内容です。ここではいわゆる「乗数効果」は1990年以降は限定的であるとの指摘もありした。
「4.為替レートと国際収支」は、為替レートが変動する要因などについての内容です。
以上のお話に対して、一見すると大学の経済学の講義のようだという感想もありましたが、宇都宮さんが随所で指摘されていたのは、マクロ経済は多くの要因が相互関係を持って動いているシステムであり、局所的な面だけを取り出して評価することは適切でないということです。
財政出動による経済成長を主張する議論に対して、明快に反論できる議論を整備してゆく必要性を改めて確認しました。