政府は、大規模災害に備えた耐震化など、主にインフラ整備を進める国土強靱(きょうじん)化基本計画と、その達成目標時期を定めたアクションプランを閣議決定した。
基本計画は2013年末に施行された国土強靭化基本法を基に、15年度予算案などに反映して防災対策を本格化させる。
基本計画の狙いは、東日本大震災を教訓に、南海トラフ巨大地震などによる甚大な人的被害や経済活動の停滞といった事態の回避である。このため、東京一極集中から脱して、自律・分散・協調型の国土形成につながるよう日本海側も重視した。
理解に苦しむのは、27年開業予定のリニア中央新幹線や新東名など高速道の建設、20年の東京五輪に向けた都心の整備を重視していることだ。総じてハード中心で予算の膨張を招く恐れが強い。
すでにその兆しは出ている。各省庁が14年度政府予算に、国土強靭化にあたる事業費計3兆3283億円を計上しているのだ。13年度当初予算に比べて14%増の高い伸び率である。
防災対策は重要だが、公共事業のばらまきにならないように国会での十分な論議が必要だ。
アクションプランには、最大級の津波を想定したハザードマップの作成のほか、防災訓練を行う市町村の割合を、12年度の14%から16年度までに100%とすることも明記した。
国土強靭化で数少ないソフト面の対策である。目標達成に全力を挙げてほしい。
また、国土強靭化基本法では地方自治体も地域計画を作ることになりそうだ。そのための指針も今回、政府が示した。
それによると、人的被害や経済機能のまひなど「最悪の事態」を念頭に、地域の実情に応じた施策を盛り込む。鹿児島県や県内市町村も、地域防災計画とは別に、経済活動の実態などまで踏まえた計画作りを急ぐことになる。
気になるのは災害発生時に避難所になる例が多い学校の耐震化がまだ万全ではないことだ。
文部科学省の調べでは、震度6強の揺れで倒壊の危険が高い校舎などが1254棟、落下対策が必要なつり天井は6222カ所に上った。改善が急務だ。
国土強靭化基本計画は、リニア新幹線や首都圏対策ばかりが強調されがちだ。だが実効性を高めるには各地域の防災力が上がってこそである。
国には、強靭化地域計画作りや学校の耐震化対策などを通じて、自治体と十分連携することが求められる。